続けて外から銃撃音が上がり、銃弾が次々に飛び込んで来た。エルは反射的にクロエを抱え、共にテーブルの下に避難して両耳を塞いでうずくまった。自分が悲鳴を上げているような気もしたが、次々に巻き起こる破壊音と銃声に聴覚は麻痺した。

 しばらくもしないうちに、ドサリと何かが落ちる音がした。片目を開けて確認すると、それはボストンバックの端を咥え持ったクロエだった。

「ックロエ、先に逃げろ! 安全な場所にいるんだ!」

 どうにか彼女だけでも、先に安全な場所へとエルは思った。

 クロエはエルの切羽詰まった声を聞くと、バッグをテーブルの下に置いて、一目散に視界の隅へと消えていった。賢い猫なので、後で合流出来るようどこかに隠れていてくれればいいのだが、とエルは祈った。

 天井のシャンデリアが粉々に砕けて、会場に降り注いだ。銃声の嵐は止まず、逃げ惑う人々の悲鳴を聞いたエルは、ふと、何者かが近づいて来る気配を覚えて、テーブルが盾になる場所まで四つん這いで進んだ。