「結局のところ、この件に関しては、向こうでも進展はないようだね」

 通信機器を片付けた後、スウェンはログにそう告げた。

 ログはスウェンの胸中を察したのか、擦れ違い様に彼の肩を軽く叩いた。

「あいつらの仕事は、いつも悠長なんだよ。現場と比べたら、奴らの苦労なんてちっぽけなもんさ」

 ログは、さっそく左手で支柱に触れた。静電気のように発した光と共に、赤黒い紋様が彼の腕に浮かび上がる。

 心臓を貫かれた生き物ように、支柱が一際大きな稼働音を上げた。数秒ほど部屋全体が振動したかと思うと、すべての機器が一斉に動力を失い、部屋は静寂に包まれた。

 四つ目の支柱と、それに関わる機器が徐々に灰となって崩れ始めた。音の無い崩壊が、次第に吹き荒れる風をまとって激しさを増してゆき、とうとう支柱の中に残っていた男の顔も見えなくなっていった。

 部屋中を、白い花弁のような残骸が舞った。

 スウェンは、その光景をじつと見つめていた。支柱となった男は、この世界でどんな『夢』を見ていたのだろうか。全ての機器が消える刹那、眠る男の顔が、一瞬だけ微笑んだような気がした。


「……本当はさ、ずっと悩んでいたんだ。どこまで、僕らの事を明かせばいいのか」


 スウェンは、唐突に小さな声でそう打ち明けた。

「エル君は賢い子だ。自分が生身の身体である事も気付いていた彼に、嘘を吐くのもなんだか億劫で」