年頃が十六歳ほどまで若返った少女が、左右へゆっくり目を向けた後、突然、手で顔を覆って泣き出した。
「え。あの、君、大丈夫?」
そう声を掛けると、彼女の手が素早く伸びて、エルの腕を力強く掴んだ。
女の子の力とは思えないほど強い腕力に、エルは腕が軋んで、堪らず「ぐぅ」と呻いた。振りほどこうにも、掴まれた手はビクともしなかった。
少女が顔を上げ、美しく研ぎ澄まされた異国の青い瞳が、正面からエルを見据えた。その表情は、まるで先程とは別人のようだった。大きな瞳は優しげで、小さな唇からは謙虚さも窺えた。
「ごめんなさい。私は、あなたを巻き込みたくはないの。だれど、もう時間がないわ。どうかお願い。早く『エリスの世界』に来て。もう一つの身体が、『私』を押し込めてしまうのよ。もう、私……」
掴まれた腕に更に力が加わり、エルは、掛けようとした言葉を飲み込んだ。少女の顔の半分の表情が失われ、片方の目の焦点が合わなくなったのだ。
「え。あの、君、大丈夫?」
そう声を掛けると、彼女の手が素早く伸びて、エルの腕を力強く掴んだ。
女の子の力とは思えないほど強い腕力に、エルは腕が軋んで、堪らず「ぐぅ」と呻いた。振りほどこうにも、掴まれた手はビクともしなかった。
少女が顔を上げ、美しく研ぎ澄まされた異国の青い瞳が、正面からエルを見据えた。その表情は、まるで先程とは別人のようだった。大きな瞳は優しげで、小さな唇からは謙虚さも窺えた。
「ごめんなさい。私は、あなたを巻き込みたくはないの。だれど、もう時間がないわ。どうかお願い。早く『エリスの世界』に来て。もう一つの身体が、『私』を押し込めてしまうのよ。もう、私……」
掴まれた腕に更に力が加わり、エルは、掛けようとした言葉を飲み込んだ。少女の顔の半分の表情が失われ、片方の目の焦点が合わなくなったのだ。