「お前、ここの『エキストラ』じゃねぇのか」
「は? 『エキストラ』って、何?」

 エルが答えるや否や、頑丈な椅子が倒れる音がホール中に響き渡った。

 男のそばにいた大柄な日本人風の男が、素っ頓狂な声を上げて過剰反応したのである。エルは、ますます眉を顰めた。

「何なのさ、一体」

 エルが憮然と問い掛けると、日本人風の男が「え、君、だって」と、日本語を忘れたような声を発した。

 あれ? そういえば、こいつらかなり日本語が丈夫だな?

 彼らの日本語が達者な事について、エルは遅れて気付いた。沖縄に住んで長く、流暢に話す外国人も知っていたので、やはり基地の人間だろうかと考えようとしたが、そんな余裕は、次の瞬間には吹き飛んでしまっていた。

 大通り側に面していた窓ガラスが、内側に向けて一斉に勢いよく砕け散った。ガラスを叩き割った爆音と客たちの悲鳴が、嵐のような騒音と化して室内をつんざく。