ああ、すごくいいなぁ。くそぉ、可愛い、可愛過ぎる。

 兎達の可愛らしさと暖かさに、エルの顔は弛緩した。あまりの可愛らしさに堪らず続けて頬をすり寄せると、白い小兎もエルの鼻にキスを返してくれた。

「いやはや、非常に愛らしい光景かと思われます」

 その時、突然第三者の声が響き渡り、エルは飛び上がった。

 自分一人しかいないだろうと踏んでいたエルは、唐突に声を掛けられて飛び上がった。

 振り返りざま目に飛び込んで来たのは、入口に寄りかかり、こちらを見降ろすホテルマンの姿だった。彼は腕を組み、大人ぶった顔で何度も肯いている。

「お、おおおお前、いつからそこにいたのッ!?」
「え? あなた様が『もし抱きしめて、もふもふした兎に頬ずり~』と独り言をされている辺りから、こちらにおりましたが?」
「え、マジか。俺、考えてる事、全部口に出てた……?」

 嘘だろ、とエルが目を向けると、ホテルマンは「さあ、どうでしょうねぇ」とはぐらかすように口笛を吹いた。