「この場所は面白い仕掛けになっていますよ! わたくし、孔雀のダンスが見られました!」
「孔雀!?」

 エルが振り返ると同時に、別の扉が閉まる音が聞こえた。真っ直ぐ続く暗黒の通路に、既にホテルマンの姿はなかった。

 ホテルマンは、一人で楽しくやっているようだ。そう想像すると、エルの好奇心もうずいてしまった。

 エルは、実物の孔雀を見た事がなかった。オジサンの家にあったテレビで、動物達の様子を目にした事はあるが、動物園やペツトショップとも縁がない生活だった。

 つい、エルは、辺りに目を向けた。

 すぐ近くに小動物の絵らしき扉があったので、胸の高鳴りを覚えつつ、慎重に扉を開けてみた。部屋の中には緑の絨毯が敷かれており、色とりどりの小さな兎が、絨毯にまかれている餌を食べながら、柔らかい毛並みを動かせていた。

 兎はかなり小ぶりで、エルが、図鑑やテレビで見た事のある兎に比べると耳が短く、体毛は長かった。小動物達は来訪者に全く警戒をみせず、それぞれ「もふもふもふもふ」と餌を食べ進め、絨毯の匂いを嗅いだり、眠りについていたりと自由にしていた。