思春期に入った際には、助けを求める事に少し葛藤を覚えた事はあった。

 けれど、助け合わなければならないという環境が、セイジの心を救ってくれた。自分の意思を示し、伝える事はとても大切なのだと、彼は仲間達に出会って教えられたのだ。

「……そうか。君たちは自分から『助けてくれ』とは、言わないんだな」

 セイジは、ログがエルに抱いているらしいもどかしさを、少しだけ共感出来たような気がした。

          ※※※

 エルとホテルマンが進み入った扉の向こうには、暗闇が広がっていた。暗闇の中で、左右対称に銀色の扉が何百も続いており、先は果てが見えなかった。

 床も壁も天井も、全て黒で統一されていた。触れてみると、確かに地面も壁も存在していたが、色か真っ黒のせいで境目の判別し辛いのだと気付かされた。
灯りはないが、不思議と扉や、お互いの姿だけはハッキリと確認する事が出来た。

 扉の中央には、それぞれ模様のような柄が描かれていた。それは犬であったり、鳥であったり、ハート、少女、兎、時計、王冠など、様々なテーマで描かれている。分類不明の絵もあったが、ホテルマンはそれを「吊るされた男です」と断言し、はたまた別の扉の絵のテーマについては「借金ですな」と評した。

「……芸術って難しい」
「うふふ、お任せあれ! 私はホテルに勤めて一筋でしたから、芸術や美に対しても理解力が高いのですよ」