前線部隊の任務の際には、敵の策略や陰謀の場所を、知らずのうちに避けて仲間と合流した事もあった。地雷の海だとは知らず「近道しよう」と足を踏み入れ、一度も地雷を踏んでしまう事もなく、仲間に皆に驚かれた事もある。

 誤って彼が落とし穴に落ちた時は、偶然にも緊迫した状況が広がっていた階上へと落下し、主犯格の頭を尻で強打して、皆の危機を回避してしまった事もある。あの時は、ログも腹を抱えて笑ってくれていたが。

「もしかして、落ちる場所を間違えたのかなぁ……」

 セイジは自分を、ある種の不幸体質だと思っていた。

 何というか、思い返すと、いつもタイミングが悪いような気がするのだ。テロリストが仕掛けた『道案内』が上手く作動しなかった為に、道を間違えてしまった経験が、彼の脳裏を掠めた。

 自分の運の悪さは、敵すらも巻き込んでしまう事があるらしいと、セイジは経験から身をもって知っている。

 セイジは、少し不安を覚えて来た道を振り返った。

 自分を受けとめてくれた大きなクッションの姿は、既に見えなくなっていた。あのクッションが、何かしら必要なアイテムだった可能性はあるのだろうか、と少しばかり考えてみるが、やはり意味などないような気もした。

 スウェンのように裏を読むのは苦手だし、ログのように最短で行動を起こす事も出来ない。

 セイジは困ってしまった。難しい事に対しては、免疫がないのだ。三つの選択肢が目の前にあるとするならば、彼は真っ先に考える事を放棄して勘で選んでしまうだろう。

 とはいえ、勘では選べない今の状況は、彼にはとても難しい。

 ふと、セイジは足を止めて左方向へ顔を向けた。誰かに名前を呼ばれた訳でもないが、何かあるような勘が働いた。まるで、何者かが、こちらへおいで、と手招きしているような感覚だ。

 ちょっと探ってみようかという、根拠もない軽い心持ちが、セイジの足をそちらへと向かせた。