「お食事を、ごゆっくりとお楽しみ下さい。猫ちゃん様の専用フードも持ってまいりますが、彼女様の身体に悪くないメニューであれば、同じようにあちらから取り皿を持って、お与えになってもよろしいかと」

 そう言って、ホテルマンは律儀に頭まで下げてから去っていった。

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 バイキングの料理は、サラダ、炒め物、煮物、スープ、創作料理、デザート等、種類豊富で彩りも豊かだった。

 しかし、テーブルに戻る頃には、何故だがあまり食欲がなくなってしまっていた。とりあえず胃に詰めていったものの、気付いたら料理がなくなっていたというような、妙な味気なさを覚えた。

 ホテルマンは約束した通り、クロエの分の専用フードも持って来てくれた。エルはその中から、一番消化に良さそうで栄養価も高いものを選んだ。クロエは、皿の上の食事をペロリと平らげたが、いつものように丹念に顔や手を洗う事をしなかった。

 一人と一匹は、食後にミルクたっぷりの珈琲と、小皿の牛乳で一息吐いた。やはり、どうにも腹が膨れているようには感じない。

 エルは不思議に思いながら、別でマンゴージュースを取って飲みつつ、辺りの様子を窺った。婦人達は、相変わらず珈琲とデザートで談笑を楽しんでおり、サラリーマン風の男達は、小難しい話しに花を咲かせていた。