崩れ落ちる化け物の切り口から覗いていたのは、作り物の人工筋肉と、やけに目立つ青い人工心臓だった。現実世界では有り得ないため仕組みは不明だが、その体内には一つの液体も通ってはいない。

「これで俺たちを真っ二つにしてやろうって魂胆か。趣味悪ぃな」

 ログが背中に担いだ長い肉切り包丁を、二回ほど上下させた時、スウェンが脇から顔を覗かせて「どうだろうね」と言い、弾の切れたショットガンを投げ捨てた。

「というか、君がそれを簡単に振り回せる事が不思議でならないよ。それ、すっごく重いんだから」
「セイジなら、俺よりも上手に使うだろうさ」
「そうだよねぇ。こんな時にセイジがいたらなぁ」

 豚から漂う異臭とアルコール臭、ひどい血の匂いが充満した室内の床は鉄造りで、オレンジ色の小さな電球が、ぽつりぽつりと空間内を照らし出している。

 室内の終わりは見えず、冷房の稼働音に紛れて、化け物が飛び出してくる環境は最悪だった。幸運だった事は、室内に踏み入ってすぐ、スウェンが小さなヒントに気付いた事だ。