「行きますよ、小さなお客様」
「うん。敵が飛び出して来たら、避けてね」
「おやおや、物騒ですねぇ」
「そっちこそ、頭の中では物騒な事を考えている癖に」

 二人は、目で合図して笑った。

 ホテルマンがもう一度肯き、それから――勢いよく扉を開けた。

          ※※※

 エルとホテルマンが、長い落下時間を経て、ようやく化け物との対面を果たしていた頃、回廊を真っ直ぐ進んで一つの会場に辿り着いていたログとスウェンは、既に戦場に身を置いてしばらくが経過していた。

 そこは、下処理がされて内臓を取り出されただけの、豚の死体が何百と天井から吊るされた、薄暗いひんやりとした加工場だった。

 ログとスウェンは、次から次へと出てくる首のない怪物と対峙し続けていた。エル達が遭遇したものと同様の化け物だったが、こちらは視界の悪い中、どこから飛び出してくるかも分からない状況になっていた。

 スウェンとログは、五感を研ぎ澄ませながら先へと進み、お互い以外の気配と殺気を察知しては殺しにかかった。