運搬用のエレベーターが起動し、ベルトがキュルキュルと滑る音が室内に響き渡った。稼働音に合わせて電灯が震え、湿った生臭い空気が漂い始める。
右方向の扉の向こうに一つの気配を感じ、エルは反射的に身構えた。ホテルマンが、「あらららら」と礼儀正しく直立したまま首を傾けた。
「ゲーム・スタート、というところですかねぇ」
「俺らが状況把握するまで待っていてくれるなんて、ほんと、親切だね」
「ゲームなんてそんなものでしょう。主人公が目的を定めないまでは、イベントは発生しないものなのですよ」
話している間に、飾り気のない銀色の作業場扉のロックが外れ、ゆっくりと扉が開かれた。
そこからまず、のっそりと顔を覗かせたのは、二メートルを裕に超える巨大な肉切り包丁の鋭利な刃先だった。それを直視した途端、エルとホテルマンは、それぞれ「うッ」「ごほぉ!?」とほぼ同時に悲鳴を噛み殺した。
二人は、巨大な侵入者が、小さな扉をのっそりとくぐる様子を恐る恐る観察した。侵入者は、工場内のリノリウムに両足をつけたところで、ゆらりと立ち上がった。
のっそりと扉をくぐり入って来た怪物を前に、エルとホテルマンは、しばし硬直した。
右方向の扉の向こうに一つの気配を感じ、エルは反射的に身構えた。ホテルマンが、「あらららら」と礼儀正しく直立したまま首を傾けた。
「ゲーム・スタート、というところですかねぇ」
「俺らが状況把握するまで待っていてくれるなんて、ほんと、親切だね」
「ゲームなんてそんなものでしょう。主人公が目的を定めないまでは、イベントは発生しないものなのですよ」
話している間に、飾り気のない銀色の作業場扉のロックが外れ、ゆっくりと扉が開かれた。
そこからまず、のっそりと顔を覗かせたのは、二メートルを裕に超える巨大な肉切り包丁の鋭利な刃先だった。それを直視した途端、エルとホテルマンは、それぞれ「うッ」「ごほぉ!?」とほぼ同時に悲鳴を噛み殺した。
二人は、巨大な侵入者が、小さな扉をのっそりとくぐる様子を恐る恐る観察した。侵入者は、工場内のリノリウムに両足をつけたところで、ゆらりと立ち上がった。
のっそりと扉をくぐり入って来た怪物を前に、エルとホテルマンは、しばし硬直した。