仮想空間に巻き込まれた男装少女は、軍人達と、愛猫との最期の旅をする

 穴が開いていた場所は、タイミングよく床とすり替わっており、まずは体重のあるホテルマンが背中から着地し、その上にエルが頭から落ちた。

 ホテルマンの短い悲鳴が二回上がった。避ける間もなかった彼は、胸でエルの頭を受けとめた後、続けて腹部にエルの背中を受けとめ、ピクリとも動かなくなった。

「ご、ごめんごめん! 大丈夫ッ!?」
「ぐふッ――も、問題ないです、だいじょーぶ……」

 数回の咳の後、ホテルマンは息を吹き返してくれた。

 二人は立ち上がると、早速辺りの様子を窺った。

「ここは工場、……ですかね?」
「うん、食品を加工する場所みたいだ」

 リノリウムの床を持った広い室内には、銀色の大きな加工台、切断機器の乗った台や、流し台等が敷き詰められていた。部屋の中央には、ベルトコンベアーが付いた巨大な作業台も設置されている。

 室内の壁には、水色のタイルが貼られており、使い古されたまな板や包丁が並んでいるのも目についた。