「恐らくですが、私たちは建物の中を移動しているものと思われます。この『ブラックホールモドキ☆(仮名)』の中では、上下左右関係ないのでしょう」
「なに、今の『☆』と『カッコ仮名』って」

 こいつ、無駄にテンション高いな。

 エルは訝みつつも、ひとまずは彼の言った言葉を考えた。

「じゃあ、落下していると思っていても、その実、上の階へ移動中とも考えられるわけ?」
「はい、左様でございます」

 さすがですお客様、とホテルマンは胡散臭い相槌を打った。

「心配には及びませんよ、小さなお客様。受付の方の説明によりますと、このゲームは各参加者のレベルに合わせて、必ずクリア出来るようになっているらしいのです。こぉんなにか弱くて心優しいホテルマンと、こぉんなに小さなお客様の組み合わせで、難しいゲーム設定は行われないはずです!」
「説明通りならそうかもしれないけどさ……で、あなたは何を望む事にしたの?」
「新しい就職先のある『町』に行く為の交通手段です! 勿論、旅費付きですよ!」

 ホテルマンは、微塵の後ろめたさもない様子で断言した。