ログが口をへの字に曲げ、両手をズボンのポケットに突っ込んだ。

「――しっかし、威勢のいい落ち方だったな、あのクソガキ。ホテル野郎も一緒に落ちたんだっけか」
「ふふ、今度会ったら僕ら、ぶっとばされちゃうのかな」
「……お前、なんだか楽しそうだな?」

 ログは言いながら、ポケットの中に隠した拳を堅く握りしめ、動揺を落ち着けるべく瞼の裏に焼きついた光景を、静かに振り払った。 

          ※※※

 開いていた穴の入口が閉ざされた後、エルとホテルマンは、ひたすら闇の中を落ち続けた。

 途中、重力が右へ、左へと、落ちる方角が変わったような眩暈を覚えた。そのたび内臓が捻じれるような圧力が掛かり、エルは気分が悪くなった。

「俺ら、どこまで落ちるんだろうね……」
「叫び疲れてしまいましたねぇ」

 ホテルマンは、正座のポーズで、エルの向かい側を落下し続けていた。彼が「落ちる」「助けて」と言ったのは初めの一分程度で、それ以降は「困りましたねぇ」「暇ですねぇ」「お茶道具も風呂敷の中でした、クスン」と悠長に無駄口を叩いていた。