大した副官だと、スウェンは肩をすくめた。彼の事を前線隊長なんて言っていたのは、一体誰だっただろうか。死んでいった仲間たちの名前が、懐かしい顔と共にスウェンの脳裏を過ぎった。

「あのガキ、知ってか知らずか、痛いところを突いてくる時があるしな」
「まぁ、そうだけどさ」

 スウェンは素直に認めつつ、ログに続いて歩き出した。

「でもね、あの猫ちゃんが消えてしまった時、あの子、まるで置いて行かれた子供みたいな顔をしたんだよ。とても強い子だと思っていただけに、本当に今にも泣き出しそうな顔が、さ……そんな事を思う僕の方こそ、どうかしているのかもしれないけれど。――戦場から遠のいていたしばらくの間に、僕も弱くなったのかねぇ」
「いつも通りだろ。あの科学者に『僕の部下に何かあったら、お前たちを皆殺しにしてやる』つってたのも、ついこの間の事だろ」
「ふふふ、そうだっけ? そんな事、覚えてないなぁ」

 あの時は、恥ずかしいぐらい必死だったのだ。忘れてくれよと、スウェンは見慣れたやや猫背の背中に向かって思わずぼやいた。