「置いてかれなくてよかったですぅ! 親切なお客様のアドバイス通り行いましたら、無事にゲームに参加出来たんですよぉ!」

 ホテルマンが、こちらに手を振りながら声を張り上げた。彼は「寂しいし心細いので、置いていかないで欲しいです!」と、ちっとも寂しさを感じさせない作り笑いで主張した。

 ログが、途端にうんざりしたような顔をした。

「……ここは、エキストラでも参加出来ちまうのかよ」
「このゲームは、てっきり外部からの侵入者専用だと思っていたんだけどなぁ……」

 スウェンが、無理に浮かべた愛想笑いで、ホテルマンに手を上げて応えた。出来るならばもう見たくなかったかなぁ、とスウェンは口の中でぼやいていた。

「おい、どうする。奴を待つのか? 俺ぁ嫌だぞ」
「え、待たなきゃいけない感じなのかい? 僕だって逃げ出したいよ」
「彼はエキストラなのだろう? それであれば、待つ必要はないのではないかと……」
「でも、置いていったら可哀そうじゃない?」

 そう言って、改めてホテルマンの姿を確認したエルは、一つの違和感に気付いた。

 ホテルマンは、建物の入り口では大きな風呂敷の荷物を背負っていたはずだが、こちらに駆けて来る彼は手ぶらだった。セイジもそれに気付き、「荷物はどうしたんだろう?」と首を捻る。

 セイジの呟きが、十数メートル離れているホテルマンに聞こえた確率は低いが、ホテルマンがそのタイミングで、風呂敷を背負っていたはずの場所に手をやり「あれ?」と疑問を覚えた仕草をした。彼は、こちらへと再び視線を戻すと、荷物が消えてしまったのですけれど、手振りで伝えて来た。