蝋燭の炎で照らされた廊下は、風もなければ匂いもなかった。歩く四人の足音ばかりが、ぼんやりと響き渡っている。

 一本道の廊下には窓もなく、同じ風景ばかりが続いた。まるで、閉じ込められているような圧迫感すら覚えて、どこまで進めば終わるのか不安になって来る。

 少年の顔が見えないというホラーな話しの後、エルは、黙って三人の後ろをついて歩いていた。

 審査が行われるという回廊は、セキュリティの感知内なのであろうか。歩いていると、心を探られるような胸のざわめきを感じて、落ち着かない。

 スウェンたちの方は、エルよりは冷静であるようだった。こういったイレギュラーな事態に対しては、くぐり抜けてきた経験値が違うのかもしれない。エルは三人の後方を歩きながら、出来るだけ慎重に、穏便に事を考えようと一人必死になっていた。

 今のエルにとって、失いたくない物は一つしかなかない。

 早々にと言われても、心の準備が追いつかないでいた。ゲームの参加条件としてクロエと離れる事がないよう、必死に策を考えようにも、何も思い浮かばないでいる。

 エルは、自分の心を偽る方法を知らないのだ。もし隠されてしまっても、きっとすぐにクロエを探し出してやるのだと自分に言い聞かせても、離れている間に、彼女の身に何か起こってしまったらという恐怖に身が竦んだ。

 しばらく歩き続けた後、やや歩みを緩めたログが、隣のスウェンに目配せした。

「スウェン、ゲームの景品とやらは分からんが、引き続き支柱の破壊を考えて問題ないか」

 彼の隣を歩んでいたスウェンが、「ゲームは形上の『設定』というだけだから、問題ないだろう」と肯き返した。