「――結局、僕らは偽りの存在でしかないのですね。こうして僕が感じている『心』も、彼が視ている『夢』なのかもしれない」

 闇が少年を覆い尽くした時、男の声が「否」と答えた。

「君達は、一人一人が『理の子』として生きており、使い捨てではないのです。次の『宿主』が決まるまで『始まりの場所』へと還り、持ち返った『核』と共に眠りに付くだけ――『核』にはその人間の夢が宿り引き継がれるのですから、君達が寝ている間にも、どこかの誰かが、いつか、その人間の『夢』を見る事もあるのですよ」

 素敵でしょう、私には不似合いな話しですがねぇ、と声は含み笑いした。

 ああ、それはとても素敵ですね、と少年は意識の中で答えた。

 いずれ、『宿主』であった彼の姪っ子か親か、兄弟か、彼の事をずっと愛していた元恋人や、数少ない彼の友人達が、彼が残した少ない『夢』の風景を、自分達の『夢』として見る日がくるのかもしれないのだから。