「しかし、あなたが途中で消えてしまっては、こちらとしても困るのですよ。歪んでしまう空間の中で、あなたはゲームをフェアに進め、案内し、出口まで繋げてくれる存在です。あなたが守り通した『公正にゲームをクリアさせられる権限』が、完全にこの世界から離れてしまえば、ゲームの参加者は建物から出られなくなってしまう」

 そこまで知られているのか、と少年は苦々しく思った。

「……仕方がないでしょう。外部から受けた『侵入者の排除』の命令権が、本来であれば入った者を閉じ込め、排除するよう造られているのです。だからこそ僕は、不条理なゲームをさせないため、『ルール』そのものとして、この世界に留まっているのです。出来るだけ彼らが最短でゴール出来るよう、僕が干渉出来る範囲内で最大限に努力しているつもりなのです」

 少年は、男に対して畏怖の念を覚えた。男が一歩、二歩と間合いを詰めて来るので、距離を置こうとしたのだが、何故か両足が動かなくなっていた。