会場には、静かなクラッシック音楽が流れていた。お喋りを楽しむ客の静かなやりとりや、皿とフォークやナイフが当たる音が上がっている程度で、ホテルマンの意気揚々とした声だけが場違いにも会場に響き渡っている状態だった。

 かなり目立っているに違いないと、エルは居心地の悪さに肩をすくめた。しかし不思議と、どの客も自分たちの世界に浸っているようで、こちらに注意を向けては来ない。

 少し高い椅子に置かれたバックの中に、一匹くつろいで座っていたクロエが、欠伸を一つした。そろそろ食事にあたりたいのだけれど、と言いたそうな目をホテルマンに向けるが、彼は気付かないでいる。

 ホテルマンの話しは、もうしばらく続きそうだった。ホテルの歴史など、エルにとってはどうでもいい話題へと突入していた。

 溜息をついて視線を流したエルは、ふと、二つほど離れた席の向こうに座っていた男と目が合った。

 彼らは三人組の外国人で、一人は短髪のいかつい日本人風の大きな男、もう一人は暗いベージュ色の癖毛のある短髪をした大柄な外国人、残りの一人は金髪碧眼をしたハンサムな細身の男だった。