「なんだか、嘘ばかりでよく分からないなぁ……」

 扉がきちんと閉まった事を確認したスウェンが、一旦足を止めて、一同に少年の顔について訊いた。

 ログが「あいつ、顔が少し霞んでいたな」と違和感を認め、セイジも「曇って見えなかった」と明かした。エルは一体何の事だろうかと首を捻ってしまった。

「見えなかったの? 俺には、顔がハッキリと見えたけど……どういう事だろう?」
「さぁね。大人である僕ら三人の目にだけ、うまく映らなかった可能性もあるけれど。――僕はね、あの少年の姿が『歪んで』、うまく認識出来なかったんだよ」

 とうとう最後まで顔が見えなかったのだと、スウェンは懸念をこぼした。

          ◆◆◆

 四人の客人を見送った後、利用案内人である少年は、しばらくそこに佇んでいた。

 一つの物音さえ響かない空間には、もはや時間の流れがあるのかさえも怪しい。

 その時、不意に一組の足音が響いて、少年は訝しげに思って振り返った。そこにいたのは、胡散臭い顔をした燕尾服と蝶ネクタイをした男で、それは、少年が予想してもいなかった新たな客だった。