会場の入り口には、客の飲料が空になったら注ぎたそうと待っているらしい男性ウェイトレスがいた。彼の横に突っ立って、下げる皿はないかと客席をぼんやり見回す別のウェイターもいたが、ホテルマンがその二人にエルの相手を頼む様子はなかった。

「当ホテルのバイキングは、あちらから食器を取って頂き、右手に進みながら料理をお取り下さい。大丈夫です、当ホテルはお客様第一を心掛けておりますので、客数が少なくなった今のお時間でも、きちんとすべてのメニューがご用意出来るよう、コックに作り続けさせて頂いておりますよ!」

 ホテルマンの説明は誇張されていて、どこか嘘臭い営業マンのそれに似ていた。いちいち演技かかった喋り方が、どうも鼻につく。

 エルは席に腰かけたまま、「はあ」と二回ほど相槌を打ったぐらいだったが、ホテルマンの話は終わりそうにもなかった。エルは思わず心の中でこうぼやいた。

 こいつ、話の途中で大丈夫ですって言ったけど、俺は何も質問していないし、質問したいような顔もしてないんだけど……