建物の扉前で座り込んでいたホテルマンは、視界が見えているのか不明瞭な例の細い目で、まずは三人の印象的な男達を見て小さく眉根を寄せ、それから、エルを見て片方の眉を少し上げた。

「おやおや、こんな所でどうしたのです、小さなお客様。もしや、この男達に手篭めにでもされ――」
「んな訳ねぇだろ」

 ログが、すかさず否定した。

「お前、俺たちの事なんだと思ってんだ? 馬鹿じゃねぇのか」

 エルはログを押しやり、「あの、貴方の方こそ、どうしたんですか」と訊いた。記憶が確かであれば、ホテルマンは、二番目のセキュリティー・エリアにいたエキストラのはずだった。

 ホテルマンは、エルの問いかけを優しさと受け取ったのか、大袈裟にシクシクと声を上げて語り始めた。

「勤めていたホテルが、何者かの襲撃に遭いまして、とても大きな損失が発生してしまったのです。アルバイトやパートの一部を解雇するのは仕方のない事ですが、なぜ……なぜ長年勤めて来た優秀な私を真っ先クビにしたのか、全くもってあのクソ社長の意図が分かりません! いずれ私の手で社長の座から引きずり降ろしてやろうと、毎日毎日、こんなにも身を尽くして勤め、励んで来たというのに!」

 ホテルマンは、どこから取り出したのか、蝶の刺繍が入った貴婦人向けのハンカチを歯で噛み、悔しそうに引っ張った。彼の演技臭い悲しみは止まらず、地面を叩いて咽び泣いた。

 ログが残念な物を見る目で「それが原因なんじゃねぇのかよ」と呟いた。珍しくスウェンが、苦手な物を見る目を寄越し、さりげなくセイジの後ろに回った。