これから全員で目指さなければならない場所は、真っ直ぐ伸びる道の先に堂々と聳え立っていた。

 動く物が何もなくなってしまった大通りの先に、行く先を塞ぐように一つの建物が不自然に鎮座している。

 建物までの距離は、随分と離れていた。すっかり夜に溶け込む建物の細長い全貌は、目を凝らしても影のシルエットがぼんやりと浮かぶ程度で、三人の目の先を追わなければ、エルはしばらく、その建物に気付けなかっただろう。

 四人と一匹は、自分たちが向かう先を、数十秒ほど眺めた。

 そこまで真っ直ぐ敷かれた街の道路は、魔王の城に客人を招き入れるかのように、嫌な静けさをまとっていた。目指す建物は、まるで廃墟のように一つの光りも確認出来ない。

「武器は?」

 ログが目も寄越さずに訊いて来たので、エルは、腰の後ろに手をやり、銃の存在を確認した。

「持ってるよ」
「問題なく済むといいが」

 セイジが眉根を寄せつつ、準備運動のように右腕を回した。すると、スウェンが実に爽やかな笑顔を浮かべて、ガチャリと武器の用意を整えた。

「それじゃ、行こうか」

 いつ用意したのか、スウェンがバズーカ砲を後ろ手に背負い「鍵が掛かっている建物だったら、強硬突破だね」と告げたタイミングで、四人は同時に歩き出した。

 幅の広い公道は、寸分の狂いもなく直線に続いていた。左右に佇む建物は、一定の距離を進むと、来た道と同じ街並みが始まる。長いと思っていた通りは、実際のところ、同じ風景を何度も繋ぎ合せただけのお粗末なものだった。

 登場人物のない空間内を、エル達は歩き進んだ。仮想空間を見やったエルが、随分寂しい人だったのかなと呟くと、セイジが困ったように微笑んだ。同じ道を何千回と通っていても、誰の顔も覚えていない人間だっているんだよと、彼は悲しそうに呟き返した。