「……なんだよ?」

 やや眉根を寄せて、そう尋ねてみた。

 長い沈黙の後、ログが短い息を吐いて、そっと手を離した。

「――寝てりゃ、少しは大人しく見えんだかな」

 解放された首元に風が触れて、少しだけひんやりとした。エルは憮然とし「うるせぇ。何なんだよ一体」と、ログの背中に向かって愚痴りつつ上体を起こした。
奴にそんな事を言われる筋合いはないはずだ。つか、一体何なの、あいつ?

「眠くないって言っていた割には、ぐっすりだったな、クソガキ」
「ぶっ飛ばすぞ、お前」

 エルが反射的に拳を握りしめた時、スウェンが二人の間に割って入り「ちょっと
目を離すとすぐに喧嘩するんだから~」と困ったように仲裁した。

「エル君、ぐっすりだったんだよ。猫ちゃんが肉球タッチしても、ちっとも起きなかったんだから。あ、セイジは先に起きて、ちょっと外の様子を見に行ってもらってるから」
「何かあったの?」

 エルは、シャツの襟とコートを整えながら訊いた。足元に寄って来たクロエを抱き上げ、小さな声で「おはよう」と挨拶をする。