ランチバイキングについては、以前、クロエを密かに連れ込んだホテルで美味しい思いをした経験がある。大抵、高級レストランのランチやディナーでは禁止されているが、いつだったか、ホテルではないランチバイキングでは、外の席でクロエと食事が出来た事もあるのだ。

「そのバイキングって、まだやっているの?」
「はい! 勿論でございますよ!」

 ホテルマンは即答してから、初めて自分の左手首の腕時計で時刻を確かめた。

「今は午後の二時半ですので、一時間はゆっくりお過ごし頂けるかと」
「――値段、訊いてもいい?」
「大人お一人様千百円、猫ちゃん様は四百円で専用の缶詰をお選び頂けます。お席も、猫ちゃん様用に高い椅子をご用意させて頂きますが、どうされます?」
「……それじゃあ、食べて行こうかな」

 エルはホテルマンに案内され、ホテルのエントランスへと足を踏み入れた。

          ◆◆◆

 ホワイト・ホテルという名前を持った建物は、外観からは想像もつかないほど、一つのフロアがかなり広く造られていた。

 一階の受付を入ってすぐの大広間が、全てランチ会場となっていて、二階、三階には別の会食席も設けられており、四階から上は宿泊施設とサービスルームが設置されているのだと、ホテルマンは、訊いてもいないのにつらつらと語った。

 一階の敷地のほとんどを活用されたバイキング形式の大会場は、床は柄の入った赤い絨毯が敷かれ、表道路側はガラス張りになっていた。通りからの差しこむ光の他、高い天井には、明るい照明とシャンデリアが灯っていた。

 四人が座れるしっかりとしたテーブル席をメインに、一定の広い間隔を開けて、各テーブル席が会場いっぱいに整列している。