仮想体験の出来るシステムが確立した頃、メンバーに、新たにマルクという研究員が加わった。
マルクは彼女の友人であり、素晴らしい探究心と技術を持つ人柄に惹かれ、彼が自ら誘った人物でもあった。マルクは人見知りで、言葉数も少ないが、とても面倒見も良い男だった。
仮想空間内に、複数の人間の意識が共有出来るようになった時は、チームの皆で手を叩いて喜びを分かち合った。ナイトメアに関しては、この研究には関係がなかったので、特に誰にも知らせていなかった。
ナイトメアについては、新しい人工知能の赤ちゃんを育てているようで、彼は、その秘密が楽しくもあった。
バーチャルの世界は、何もない真っ白な空間から始まる。
彼はそこで彼女と会い、一緒に理想とする都市を想像し作成に努めた。夢の中の彼女は、活き活きとして魅力的だった。彼もまた、その中では感情豊かな一人の青年になる事が出来た。
危険感を覚えたのは、いつ頃だっただろうか。ナイトメアからの問いかけが、きっかけだったような気がする。ナイトメアは沈黙が多かったが、ある日、ブラウザ上にこんな文字列を記した。
――ソレハ、ホントウニ、彼女ナノカ?
最近、彼女は、仮想空間内での記憶が曖昧になる事があった。彼は、仮想空間内で出会う彼女の性格に、微妙な不一致が派生していることに気付いた。まるで彼女と同じ姿をした、全く別の女の子のようだ、と違和感を覚える事が増えた。
それからだろうか。彼は時々『悪夢』というものを見るようになった。
これまで経験がないので、それが『悪夢』と呼ぶに相応しいかは解からなかったが、――恐らくはそうであろう、と彼は推測した。彼の夢の中には、相変わらず景色や色はなかったが、暗闇の中に一点だけ鮮明な登場人物があり、それは、はっきりと彼女の姿をしていた。
マルクは彼女の友人であり、素晴らしい探究心と技術を持つ人柄に惹かれ、彼が自ら誘った人物でもあった。マルクは人見知りで、言葉数も少ないが、とても面倒見も良い男だった。
仮想空間内に、複数の人間の意識が共有出来るようになった時は、チームの皆で手を叩いて喜びを分かち合った。ナイトメアに関しては、この研究には関係がなかったので、特に誰にも知らせていなかった。
ナイトメアについては、新しい人工知能の赤ちゃんを育てているようで、彼は、その秘密が楽しくもあった。
バーチャルの世界は、何もない真っ白な空間から始まる。
彼はそこで彼女と会い、一緒に理想とする都市を想像し作成に努めた。夢の中の彼女は、活き活きとして魅力的だった。彼もまた、その中では感情豊かな一人の青年になる事が出来た。
危険感を覚えたのは、いつ頃だっただろうか。ナイトメアからの問いかけが、きっかけだったような気がする。ナイトメアは沈黙が多かったが、ある日、ブラウザ上にこんな文字列を記した。
――ソレハ、ホントウニ、彼女ナノカ?
最近、彼女は、仮想空間内での記憶が曖昧になる事があった。彼は、仮想空間内で出会う彼女の性格に、微妙な不一致が派生していることに気付いた。まるで彼女と同じ姿をした、全く別の女の子のようだ、と違和感を覚える事が増えた。
それからだろうか。彼は時々『悪夢』というものを見るようになった。
これまで経験がないので、それが『悪夢』と呼ぶに相応しいかは解からなかったが、――恐らくはそうであろう、と彼は推測した。彼の夢の中には、相変わらず景色や色はなかったが、暗闇の中に一点だけ鮮明な登場人物があり、それは、はっきりと彼女の姿をしていた。