その中に飛び込めと? うわぁ、勘弁して欲しい……

 エルは、腕の中のクロエと目配せした。小声で「お前なら、あの中に飛び込む勇気はある?」と問うと、クロエは両耳をやや後ろへとそむけた。

 クロエのエメラルドグリーンの呆れた眼差しは、あんな暑苦しいスペースで寝られないわよ、と言っているような気がした。それは、エルも同意見だった。

「――あの、俺、別に眠くないから、ここでクロエを抱っこして目でも閉じてるよ。それにさ、そこのベッドで四人並んで寝るのは、さすがにスペース的な問題もあって、ちょっときついかなと思うけど」
「大丈夫だよ。君は小さいし、皆で横になれば暖も取れるじゃないか。ほら、ベッドもふかふかだよ」

 スウェンはそう言って、ベッドの上を数回叩きクッション性をアピールした。

 エルが困惑している間に、セイジがベッドへと上がり、さも当然そうに横になった。軍で同じチームだったというぐらいだから、三人での共同生活には慣れてしまっているのだろう。見本といわんばかりに、続いてスウェンも横になった。

 ログとセイジの間には、子供一人分ほどの空きが作られていた。しかし、やはりベッドは満員状況だ。エルは、男三人というむさ苦しい光景に、彼らが全く疑問を抱かない事が少し心配になった。

 寝る事は、特に強制でもないらしい。スウェンもセイジも、数秒後には規則正しい寝息を立て始めた。

 彼らが本当に眠ってしまったのかは定かではないけれど、一先ず、場は落ち着いたということだろう。

 エルは、静かな室内に耳を済ませた。緊張感が完全に解れると、短い間に重なった疲労感を覚えて、思わず肩が落ちた。クロエが絨毯の上に降り、そこで気持ちよそうに伸びをした後、丸くなる様子を眺めた。