「遊んでいるわけじゃないんだよ、クロエ」
「ニャ?」
「まぁ、クロエが楽しんでいるのなら、いいけどさ……」

 ボストンバッグの中で激しく揺られる事もあっただろうが、クロエに関して、現状体調も機嫌も良さそうだった。

 エルは安堵しつつ、改めて彼女を両腕で抱きしめた。クロエが楽しそうに顔をすり寄せてくるたび、暖かい毛並みがエルの頬に触れた。

 その時、スウェンが「よし」と相槌を打った。

「ほら、エル君。せっかくの休息なんだから、君も少しは眠らなきゃ駄目だよ」
「俺、眠くないよ」

 エルがスウェンに目を向けると、クロエも、エルの腕の中から彼へ顔を向けた。

「確かに睡魔はないだろうけど、君は生身の身体なんだから、少しでも寝た方がいいよ。僕らだって精神的な疲労はあるから、少しは寝るつもりだよ。横になって目を閉じるだけでも、睡眠と同じ効力はあるからね」

 エルは、思わず特大サイズ級のベッドへ目を向けた。身体の大きな男が三人並んで寝るというむさ苦しい想像には、正直気が引ける。