本音が口から出掛けたので、早急に言葉を切ったのだろう。口調が早すぎて、こちらが言葉を挟む隙もなかった。男の表情も、張り付いた愛想笑いが変わる事がないまま、見事な弾丸トークに気圧されて、エルは一歩後退した。

「すべて当ホテルからのご好意で、こうして、お客様一人一人にお声掛けさせて頂いております! 私は、とても親切で素晴らしい、ただのホテルマンですのでご安心を。ランチバイキングメニューでは、ご希望がございましたら、ペットちゃん様のお食事も、リーズナブルなプラス料金でご用意させて頂きますよ! ちなみに、当ホテルのオーナーも大のペット好きでして、趣味の悪いぶっさいくなのが勢ぞろいで大変悪趣味なので、私は見掛けるだけで吐き気がしますし正直大嫌――ゲフンゲフン!」

 男の張り付いた愛想笑いに加え、腹黒そうな性格と、『ペットちゃん様』という台詞も好きになれそうにもなかったが、ランチバイキングの宣伝内容には少し魅力を感じた。