「おい。俺は子供じゃないし、丈夫なんだからな」
「俺は『おい』って名前じゃねぇぞ、クソガキ。――別に気を使った覚えはねぇよ、自分の身は自分で守るんだろ?」

 ログは面倒そうに言い捨てると、立ち上がり様に服に付いた汚れを払った。エルとログはお互い目も合わさず、「ふん」と顔を背けた。

 スウェンが、困ったように頬をかいた。

「エル君も相当な負けず嫌いみたいだね。そして、どっちも喧嘩っ早いと……この先、ちょっと不安だなぁ。どうにかフォローしてやってね、セイジ」
「えッ……私には、無理なのでは……………」

 ボストンバッグの中から顔を覗かせたクロエが、耳を伏せて「ニャァ」と心配そうに鳴いた。


 第三のセキュリティー・エリアは夜の世界が広がり、フクギ並木の一本道がしばらく続いた。そこは花も植えられていない、芝生が敷かれただけの公園の一角で、カーブを描いた道の先を抜けると三車線の大通りに抜けた。

 通りの左右には、隙間なくビルやアパートや飲食店が立ち並んでいた。一見すると巨大な壁が、道の左右を立ち塞いでいるような光景だった。一直線に伸びる車道は街並を縦断し、平坦な土地の中を少数の人影が流れている。

 道路の左右に敷きつめられた建物には統一性がなく、古びた細いアパート、商業ビル、二階建ての飲食店など大小様々で、道路に面した建物の奥には、背の高いビル群がびっしりと聳え建って黒い影を落としていた。

 通行人の他に、車の走行もあった。四、五台の車が、ゆとりある車間をもって道路を行き交っている。道路や歩道は、建物から発せられる電光で照らし出され、歩く人影が光りの中に影を落としていた。

 上空には星光りも見てとれたが、地上の方が明るい為に、小さな星の輝きは霞んでしまっていた。