彼の筋肉に覆われた大きな背中が小さく動いたので、エルは思わず両手を彼の背中に置いてバランスを取った。昔オジサンがやってくれた、『お馬さん』を思い出してしまった。

「おい、お前ら。真っ先に俺に謝れ」

 ログは、自分の上でやりとりされていた会話に対して、低い声で意見した。首だけ動かせると、まずは先にエルを睨みつけ、続いてスウェンへと目を走らせた。

「早くどけ、クソガキ。――あと、スウェン。お前、あとで殴らせろ」
「ふふふ、嫌だね」

 スウェンがニヤリとした。

「お断りだよ。そもそもエル君は小さいんだから、ちょっとの力でも振り落とせるでしょうに。いつもみたいに自分で退かせばいいじゃない」

 スウェンは「らしくないなぁ」と言いつつ、エルに手を差し出した。

 エルは、スウェンの手を借りて立ち上がった。ログが力技で退かさなかった件について、子供扱いされて慣れない気の遣われ方をされたのでは、と勘繰り、スウェンに手短に礼を述べてから、ログを振り返りこう断言した。