「へぇ。あ、そうういえば時間間隔って曖昧なんだけど、この世界には時計とか用意していあるの?」
「いや、時計はない。スウェンが体内時計で空間内の経過を計っている」
「体内時計と、頭脳で数字を叩き出してるの? ――それはそれで凄いね」
「ああ、スウェンは凄い」

 正直に褒めた訳ではないのだが、セイジが誇らしげに肯く様子を見ていると本音は告げられず、エルは諦めて口をつぐんだ。

 先程、支柱の消滅が確認された後にスウェンから知らされたのは、今回の支柱の強度が弱かったという事だった。空間の範囲も狭く、非常に不安定で、常に『歪み』と呼ばれるものが発生していたらしい。

 空間内の歪みというのが、今回【仮想空間エリス】で問題になっている、原因不明のバグを含む異常活動だ。

 残り三つとなった支柱についても、外では分析が進められているようだ。次のエリアは問題視されていないが、五つ目、六つ目の支柱の完成度が思った以上に高い可能性があり、空間内もかなり広範囲になっている事が懸念されているようだ。