支柱の崩壊を見届けた四人と一匹は、テーマパークの出口を目指して歩いた。
出口は閑散としており、開けた敷地には客の姿が一人もいなかった。観客がない出口前の通路を、仮装役者と着グルミだけが、まるで大勢の人たちに向かうような笑顔を浮かべて、手振りながら行進していった。

 テーマパークの出入り口には係りも警備もおらず、ゲートは開きっぱなしになっていた。

 エルは『幸せランド』の外に出た際、一度だけ振り返ってみた。沢山の風船が飛び、遠くから聞こえる楽しげなアナウンスと共に、紙吹雪が放たれて、空に大輪を描いて舞い落ちていく光景に目を止めた。

 子どもの頃に、誰もが夢見たような遊園地だった。きっと一昔前なら、エルにも楽しめる心があったのかもしれない。

 けれど、夢と希望が詰まった色鮮やかな賑やかさは、真実を知る者には虚しくも映った。

 出口を抜けると、しばらくは緩やかな下り坂が続いた。車間の広い古びたアスファルトの左右にはフクギの木が立ち並び、向かう先は、カーブを描いて見通しが悪かった。

 空は相変わらず、ペンキで塗ったような青空が広がっていた。太陽は真上の位置から動いておらず、四人が歩く影以外の通行人は存在していない。

 スウェンとログが先頭に立ち、何やら小声で今後の事を話し合っていた。セイジがその後ろに続き、時々エルの歩みを気に掛けて、視線を寄越す仕草を見せた。

「大丈夫、ついていっているから」

 何度目かの視線を寄越されて、エルは苦笑してセイジにそう声を掛けた。

 彼は気付かれないように様子を窺っていたつもりだったらしく、指摘されるや否や、半ば慌てふためき、それから大きな頭と肩を丸めて「すまない」と謝罪した。