「さて、僕らがこの世界に持ちこめた『能力』について話そう。例えば僕だと、特異な分析能力の一部が変換されて、この世界の歪みが『感覚的、視覚的に察知し見える』ようになっているみたいだ。恐らく、システム解析で捉えられない、正体不明のバグだろうとは思う」

 スウェンは、そこで一度言葉を切った。

 分析能力、と聞いてもピンと来ないが、かなり頭が切れるという事で良いのだろうか、とエルは首を捻った。

「エル君は、仮想空間内で不利になってしまうような、――例えば低下してしまうような能力はないよね?」
「普通の一般人に、そういったものを求められてもなぁ……」

 なんとなく理解した範囲内で、エルはぼやき返した。恐らく彼が言いたいのは、常識では考えられないような特殊な事柄なのではと勘繰ったのだ。

 スウェンが「ごめん。念の為に訊いておきたかっただけなんだ」と言って、話の先を続けた。

「セイジは、通常の人間より肉体が頑丈なんだ。彼は肉弾戦を主とした部隊員で、こちら側には九十パーセント以上の戦闘能力が持ちこめた。そして、今回の任務で欠けてはならないのがログの存在だろう。彼なしに、暴走してしまった仮想空間内の支柱や、プログラムの破壊は不可能だ。現状の『エリス・ブログラム』は外の司令が一切通用せず、データ・ウィルスも徹底して拒絶しているからね」

 エルは相槌を打ちながら、スウェンはリーダー的存在なのだろうと考えた。三人がこれまで過ごした中で、お互いの役割がしっかり確立されている様子が見て取れるような気がした。

 ログとセイジはほとんどが聞き手で、大事な事を話しまとめるのは、いつもスウェンの役目のようだと把握した。