場は相変わらず穏やかではなかったが、先程まで感じていた緊張感は解けていた。
スウェンが改めて一同の視線を集め、エルに向き直ってこう言った。

「本題に戻るけど、僕らがやるべき事は変わっていない。アリスを助ける、そして、『エリス・プログラム』の完全破壊。今後、君は僕らと一緒に先へと進まなければいけないから、僕らについて少しだけ話しておいた方がいいだろう。まず仮想空間内では、プログラムでは推し量れない事情までは持ちこむ事が出来ない」
「『推し量れない事情』……?」
「うん、――僕らは軍人で、一人一人がちょっと特異だった、とだけ説明しておくけれど、この世界に、現実世界で持っていた『そういった能力』は完全に反映再現されないんだ。けれど、全部が持ち込めないってだけで、僕らの『能力』が全て使えない訳でもない。僕ら三人が今回の潜入任務を与えられたのも、そこに理由があるからなんだよ」

 スウェンの視線に促され、エルは、セイジとログを順に見た。ログは相変わらず苛立ったような顔をしていたが、セイジは、申し訳なさそうに大きな肩を窄めて立ち尽くしていた。