良いように考えてみれば、クロエと一緒に、女の子を救い出して悪党をぶっとばすなんて大冒険には、もう巡り合う事なんて出来ないだろうとも思える。それは、きつと最高の思い出にもなるだろう。
老猫に残された少ない時間は、既にそこまで迫っている。エルは別れに怯えながら、クロエの優しい嘘に騙された振りをしているのだ。
エルは、スウェンからの言葉を――彼の反応を待った。
きっと聡い彼なら、必要以上の情報を求めないエルの目的に気付いてしまうかもしれない。だからエルは、お願い、何も聞かないで、俺たちは何も求めないから、と眼差しで彼に訴えた。
そして同時に、偶然与えられたこの時間と、そして、もしかしたら叶うかもしれない浅ましい俺の願いに気付かないで、と祈った。
エルの強い決意を秘めた眼差しを見て、スウェンが僅かに目を見開いた。
その時、黙って話を聞いていたログが、「それで、どうだったんだ」とぶっきらぼうに言い、スウェンが我に返ったように首を傾けた。
「外部からの報告は?」
「――ああ、外では進展なしだったよ、ログ。支柱の憶測と現状については詳細に報告した。研究チームの分析でも、支柱が一人の人間で出来ている事を否めないようだね」
スウェンはエルに向き直ると、困ったように笑った。それが、スウェンから答えだった。
踏み込まれたくない過去を持った者同士が、お互いの距離感を計りながら、それぞれ続く言葉を探す。先に口を開いたのは、スウェンだった。
「ごめんね、エル君。君の身体を至急捜索させたけれど、やはり発見されなかったみたいだ。生身の身体で入ってしまっている以上、無茶は出来ない事を承知で、【仮想空間エリス】まで付き合ってもらうしかない」
老猫に残された少ない時間は、既にそこまで迫っている。エルは別れに怯えながら、クロエの優しい嘘に騙された振りをしているのだ。
エルは、スウェンからの言葉を――彼の反応を待った。
きっと聡い彼なら、必要以上の情報を求めないエルの目的に気付いてしまうかもしれない。だからエルは、お願い、何も聞かないで、俺たちは何も求めないから、と眼差しで彼に訴えた。
そして同時に、偶然与えられたこの時間と、そして、もしかしたら叶うかもしれない浅ましい俺の願いに気付かないで、と祈った。
エルの強い決意を秘めた眼差しを見て、スウェンが僅かに目を見開いた。
その時、黙って話を聞いていたログが、「それで、どうだったんだ」とぶっきらぼうに言い、スウェンが我に返ったように首を傾けた。
「外部からの報告は?」
「――ああ、外では進展なしだったよ、ログ。支柱の憶測と現状については詳細に報告した。研究チームの分析でも、支柱が一人の人間で出来ている事を否めないようだね」
スウェンはエルに向き直ると、困ったように笑った。それが、スウェンから答えだった。
踏み込まれたくない過去を持った者同士が、お互いの距離感を計りながら、それぞれ続く言葉を探す。先に口を開いたのは、スウェンだった。
「ごめんね、エル君。君の身体を至急捜索させたけれど、やはり発見されなかったみたいだ。生身の身体で入ってしまっている以上、無茶は出来ない事を承知で、【仮想空間エリス】まで付き合ってもらうしかない」