仮想空間としての大きさ、世界感などの構築完成度。セキュリティーとして外部からの侵入者に対する力の大きさに、差があるのだとスウェンは語った。五感に受ける感覚に関しては、現在いる三番目のセキュリティー・エリアの方が、断然完成度が高いように思われる。

 それはエルも感じていた事だったので、「確かに」と肯けた。生身の肉体なので確証はないが、匂いやリアルさについて考えると、この世界は現実世界に比較的近いとも言える。

「今の段階でほぼ推測が固まっている事は、マルクが造ったセキュリティー・エリアの製造・維持には、材料となる人間が必要だった。未だに戻らない二十九人の被害者については、マルクがエリス・プログラムを新たに構築する為に、今回の支柱とは別に、二十九人もの人間を犠牲にしたんじゃないかって事だ」
「そういえば、さっき『集めて作る』とか言っていた人形がいたけど、そういう意味だったのかな」

 エルは、思い出してそう言った。【仮想空間エリア】に、二十九人もの人間を投入したということなのだろうか?

 スウェンは、「どうだろうね」と沈んだ声で答えた。