「マルクは、『エリス・プログラム』の製造については関わっていないけれど、初期のメンバーの一人ではあった。不可能を限りなく可能に近づけられるこの世界で、自分の知る知識を総動員して支柱を作ったんだろう」

 簡単に人間を殺して支柱を作る、という発想そのものが恐ろしいが、エルは同時に引っ掛かりも感じていた。

 何故そんな事をする必要があったのか。

 そもそも、どうやって停止状態のシステムを、たった一人で稼働させる事が出来たのだろう? 

「あの『支柱』を少し調べてみたけど、一つの支柱に、一人の人間の身体が丸ごと使われている可能性も出て来たよ」

 スウェンが話す声を聞いて、エルは彼に注意を戻した。

「でも、結局のところ現時点では謎ばかりだ。支柱がそうだとすると、他にも人間が使われている可能性はあるけれど――まだ憶測の域でしかない」
「でも、話しを聞いていると、以前からずっと関わってきたみたいに詳しいなぁって思うよ」

 エルが半ば感心すると、スウェンの笑みが僅かに曇った。