「『エリス・プログラム』が未完成だった頃は、個人の記憶が見えてしまう事もあったらしいけれど、そもそも精神を電気回路で繋げて、頭の中にリアルな偽物の世界を作り上げるなんて机上空論だ」
スウェンの語りは、次第に独り言のような口調になった。しかし彼は途中で気付いたのか、話題を切り替えるように声の調子を戻して、こう続けた。
「つまり、急きょ作り上げられたらしい支柱には一人の人間が使われていて、六つのセキュリティー・エリアには、【仮想空間エリス】とは違った独立した世界設定がある。――とはいえ、僕が推測するに、当初の支柱は防衛の役割ではなく、『エリス・プログラム』の再構築と崩壊の歯止めのためのものだったんじゃないかと思うけど」
実は研究が中止されていた時点で、『エリス・プログラム』は原因不明の崩壊を始めていたのだとスウェンは語った。システムと完全に停止状態に入り、だからこそ、再稼働するなど誰も考えていなかったのだ、と。
スウェンの語りは、次第に独り言のような口調になった。しかし彼は途中で気付いたのか、話題を切り替えるように声の調子を戻して、こう続けた。
「つまり、急きょ作り上げられたらしい支柱には一人の人間が使われていて、六つのセキュリティー・エリアには、【仮想空間エリス】とは違った独立した世界設定がある。――とはいえ、僕が推測するに、当初の支柱は防衛の役割ではなく、『エリス・プログラム』の再構築と崩壊の歯止めのためのものだったんじゃないかと思うけど」
実は研究が中止されていた時点で、『エリス・プログラム』は原因不明の崩壊を始めていたのだとスウェンは語った。システムと完全に停止状態に入り、だからこそ、再稼働するなど誰も考えていなかったのだ、と。