ログがエルの顔を覗きこみ、「どうした」と神妙な顔で訊いた。

 棘もない気遣うような深く低い声は聞きなれなくて、違和感を覚えた。けれどエルは、らしくない大人びた表情をするログに、子共扱いするなよ、と言い返す気力もなかった。

 人形達の泣き声が、嫌な憶測をかきたてて止まらないでいた。

「変だよ。だって、これって、まるで……誰かの夢そのものみたいじゃないか」

 誰かが見た光景や、誰かが望んだ世界が、希望と悪夢に満ちた一つの世界を作り出している。

 エルは、屈んで近くなった彼の深いブラウンの瞳を見つめ返した。ログの瞳に映り込む自分が、ひどい表情をしているのが見えた。

「ここには、……支柱が作り出している仮想空間には、一体誰がいるの? あの子達は、きっとその人にとって『悪意のない友達』なんじゃないの? だから、みんなで守ろうとしているんだ」

 幼い頃、人形に名前を付けて遊んだ。友達だからと小さな鞄に入れて連れ歩き、いつか両親が一緒に行こうと約束してくれた、色鮮やかで可愛らしい遊園地を想像していた。