その手応えにコツを掴み、エルは途中から怖さも躊躇も忘れて、飛び込んでくる人形を次々に打破した。ほとんどのログが先頭で暴れていたため、しばらくもすると、エルの方に突進してくる人形は少なくなった。

 攻撃の手が止まった数秒、エルは、ふと後ろを振り返った。

 不意に、壊された人形達に目が吸い寄せられた。地面の上で身体の自由がきかずに震えている人形がほとんどで、壊されても完全に停止しているものはなかった。

 彼らには表情はないが、どうにか立ち上がろうともがいている様子は、どこか人間じみて痛々しく、エルは思わず凝視してしまっていた。どの人形も必死だったのだろうと思ってしまい、戦闘意識が罪悪感で揺れる。

 引き摺られては駄目だ。エルは、警棒を構え直して、前方へと視線を戻した。


『ヤメて……放っておいて』


 そう呟いたのは、地面に転がっていた頭や首の一部が欠けた木製のキコリ人形だった。人間のような悲痛の声が耳に入り、エルは、思わず闘いを忘れて顔を向けてしまった。

 その刹那、近くで銃声が炸裂し、目の前で砕け散った銀色の破片が、宙を舞う輝きに目を奪われた。