育て親であったオジサンが脅かし続けたせいで、エルは、大のホラー嫌いだった。特に、彼がチョイスして見せた恐怖映画に関連するものは完全にダメだ。物理攻撃で倒せそうにない、幽霊やら呪いの人形に関してはトラウマが強い。

「人形といえど、仮想空間の作り物だ。多分、銃も効くだろう」

 ほとんど五十センチ以下の敵を眺めたログが、腰の銃を手に取った。人形達はテディ・ベアの前に立ちはだかり、まるで開始の合図を待つ兵隊のように構え始めていた。

 エルは恐怖を堪え、強がるように顔を顰めて「どうするんだよ」とログの腰辺りを小突いた。彼は「ふむ」と数秒ほど眉根を寄せ、こう言った。

「仮想空間で行動する場合は、イメージが大事らしい。あいつらが塞ぐ先に目的地があるはずだから、自分の攻撃が絶対に効くとイメージして突き進め」
「……それって、無計画って事じゃないの?」
「金属バットか、リーチのある武器がありゃあ突破出来そうだな」
「お前ッ、俺の話し聞いてないだろ!」