「スウェン隊長の任務遂行には、この空間が邪魔だ。――だから、さっさと壊させてもらうぜ」

 前触れもなく、ログがストレートな宣戦布告をした。

 セキュリティーを動かすには、もってこいの敵宣言だったのだろうか。テディ・ベアのまとう空気が一変した事に気付いて、エルは緊張感を覚え身構えた。

 テディ・ベアは、頭をぐらぐらと揺らせたかと思うと、自身の解れた首の中に手を突っ込み、そこから鋭利な刃物を取り出した。それは柄の黒い、少し錆びた肉切り包丁だった。


『――させない。守る。連れ出されたくないんだ』


 壊れた録音テープのように、テディ・ベアが、脈絡の掴めない呟きを上げた。

 すると、草の塀の茂みが揺れて、大きさ不揃いな人形が次々と現れ始めた。ストラップほどの小さな兎の人形や、キャラクター人形、毛糸で出来た小さな熊、ピンクのドレスを着たフェルト生地の女の子、ペンギンや犬や猿といった中型の人形達、木材で出来た同じ顔の兵隊人形……

 真新しい物から古びた物まで種類も様々だったが、可愛らしい顔をした彼らは、ナイフやハサミなどの物騒な装備をしていた。

 いつか見たホラー映画のような光景の他、恐怖映画に出演していた人形じゃないのかと思うような、壊れかけた顔の怖い人形もいて、エルは危うく卒倒しかけた。

 嘘だろ怖いんだけど、マジで直視したくない光景なんですけど!?