つまりホテルで散々怖い目に遭ったのも、うっかりの誤作動ではなく、向こうの勝手な都合なのだと思うと無性に腹が立って来た。あのテディ・ベアが首謀者ではない事は理解出来るが、人を勝手に材料に例えた台詞は、非常に気に入らない。

 オジサンが俺に生きる力をくれたんだ、負けてなるものか!

「――材料とかなんとか勝手に言ってくれるけど、俺はやられっぱなしが大嫌いなんだ。事情は知らないけど、俺の事を勝手にしようだなんて言う奴は、片っぱしからぶっ飛ばしてやる」

 エルは、低い声で吐き捨てた。

 ログが意外そうに片眉をつり上げ、途端に口角を引き上げて「いい心がけだな」と相槌を打った。

「お前の事、ちょっとは見直してやってもいいぜ、ガキ」
「ガキっていうな。負けっぱなしは俺の性分じゃないって事を改めて思い出したんだ。必ずここから出てやるし、俺を巻き込みやがった奴にも一発決めてくれるッ」

 エルが拳を固めてテディ・ベアを威嚇すると、ログが一つ肯いた。

「よし。なら、覚悟は出来てるよな」
「あ?」

 途端に、エルは嫌な予感を覚えて彼を見上げた。ログは既に前方に視線を戻しており、不敵な笑みを浮かべたまま、テディ・ベアに向かって一歩前進した。