呟いた納得の言葉が、胸の中にすんなりと落ちて来た。それを始めから彼らが想定していたとすれば、ログが荷物という表現をした事や、スウェンが丁寧に危険性について語った事や、やけに気に掛けていたようなセイジの行動にも説明が付く。

 スウェンは初めて集まった際に、エルの掌の傷に気付き、ちらりと確認する素振りを見せていた。もしかしたら彼は、向こうから何かしらの接触がある可能性も高いと考え、エルを身近に置いていたのではないだろうか。

 エルは、掌に残る小さな傷の感覚を確かめる為、強く拳を握りしめた。そこから伝わる痺れるような鈍い痛みに、ここにあるのは自分の肉体である事が改めて実感出来た。

 守られるつもりもなければ、守られてやる義理だってない。

 どうか、クロエと笑ってお別れが出来る、悔いのない最初で最後の旅を――場所が変わろうと志を変えるつもりはないし、心だけは何者にだろうと邪魔が出来ないものだ。

「おい、お前――」

 異変に気付いたログが、しまったな、という顔で投げかけた言葉は途中で途切れた。

 エルは気迫をまとわせ、が強くテディ・ベアを睨み返した。ボストンバッグから顔を出しているクロエが、エルに声援を送るように陽気に「ニャー」と鳴く。

 元は被害者になる予定だった、という事について、今はどうでもいい。

 何故なら現在、エルは生きているし、クロエだって怪我一つなく存在している。生きている限り、エルが彼女を守ればいい。

 一人と一匹が生きている今、現在も『旅』は続いているのだ。

 しかし、知らない間に自分の生死を勝手に決ようとしている者がいて、ログ達という同行者が出来てしまった今も続く『旅』を、向こうの都合で止めさせられるかもしれない、と考えるだけで我慢ならない。

 元よりエルは負けず嫌いで、やられっぱなしは性に合わないのだ。