テディ・ベアは身体の縫い目が解けており、毛もごわごわしていた。人形としては年季が入っているようで、テディ・ベアの黒い瞳は少し削れており、右耳には、茶色くくすんだ商品タグがついていた。

 その人形は、不安定ながらも両足でしっかりと地面に立ち、作り物の目で二人を見据えていた。

『君たちは、誰?』

 テディ・ベアから、男児のような声が上がった。

『僕たちの世界を、壊しに来たの?』

 ログは黙っていた。そのそばでエルが息を呑むと、その人形は、ようやくエルの存在に気付いたように、ぐるりと首を回した。――正確には、半分切れてしまっている首を落としかけながら、首の向きを変えた。

 とんだホラーだな!

 心の中で突っ込むものの、エルはホラーな展開を思わせる光景には耐え切れず、条件反射のように高く短い悲鳴を上げて、反射的にログのジャケットを掴んでしまっていた。

 テディ・ベアが、興味深げにエルを見つめた。

『――ああ、その子がそうなんだね? この子を使えば、きっと、あの子も……だって、あの人間は、ソレを沢山集めて作るんだって言っていたもの』