よく分からない問い掛けだったが、エルは気まぐれで、少しだけ考えてみた。

「願った人は、その誰かの事が自分よりも大切なんだと思う」
「なるほど、『大切』か」

 男は、あっさりと認めたように肯いた。

「願われた他者にも意思や望む未来があるが、一つしか手助けする事が出来ないとしたら、本人を無視しても良い事なのか? 他の者も、それぞれが同じ者の未来を願ったとしても、それが、関わる全ての人間の未来の『縁』を派生させるものだとしたら?」
「……なんだか難しい話しだなぁ。それ、俺が答えられるような質問じゃないよ。多分、頭のいい人が、ずっと考え続けているような難題じゃないの?」

 エルが困ったように笑うと、僧侶も「そうなのだ、難しい」と肯いた。

「だからこそ、私は他者の意見を聞いてみたい」
「それって、俺でも構わないって事?」
「私は今、君の意見を聞きたい」

 脇を通った二人組の女性が、怪しいものを見る目をエル達に向けた。

 妙な勧誘を受けていると勘違いされたのだろうか。そう思ってエルが顔を上げると、彼女達は、足早に去って行ってしまった。