「ここって山に出来ているんだね」
「緑は一つもねぇがな」

 言われてみれば確かに、花壇も池も飾り木もない。

 ログが、苦虫を潰したような顔で踵を返した。

「――まるで、ガキの考える『夢の国』だ。虫唾が走る」

 風の音が一際強く吹いた。エルは、風の音が邪魔してログの言葉をうまく聞きとる事が出来なかったが、彼が悪態をついている事だけは何となく察した。

 頂上に近づくにつれて、アーチのかかった階段と、吹き抜けの踊り場ばかりが続いた。右にも左にも似たような道が続き、迷路だったなと思い出して一度来た道を戻り、逆の階段を上っても同じところに出てしまう、と選択ミスが目立ち始めた。

 ぶっ通しで坂道と階段を上がる作業は、エルの体力を削った。

 日差しの位置は天辺のままで変化がなく、影も動かない為、頂上にある城の屋根を頼りに突き進むしかないが、迷路の騙し道の行き止まりが圧倒的に多く、造りが複雑すぎて一度通った道順も覚えられないために苦戦を強いられた。